医療法人社団愛生会 上里医院 江尻町,坂出市,八十場,香川県 胃腸科,内科,外科,麻酔科

   認知症

監修

医学監修:順天堂大学大学病院 精神・行動科学 教授 新井 平伊 先生
監修:公益社団法人 認知症の人と家族会

・ヤンセンファーマ株式会社
・武田薬品工業株式会社
 

ご本人は、どんな気持ちでいるのでしょうか?

認知症の初期、ご本人は今までとは違う自分に戸惑い、不安な気持ちでいっぱいです。
認知症のごく初期に起こる症状は周囲の人では分かりにくく、ご本人が一人で悩んでいる状況です。

認知症の初期にご本人が感じている想い

● 今まで当たり前のようにできていたことができなくなる苛立ち
● 簡単なことをミスする情けなさ
● 自分がどうなっているのか分からない不安

多くの認知症の方が自分の中に起きている変化を周囲に気づかれないように隠そうとします。
そのため、もの忘れなどを指摘されると、イライラして怒りっぽくなることもあります。
ご家族からみれば、以前と人柄が変わり、自分勝手になったように見えるかもしれませんが、
ご本人は今、誰にも言えない不安を一人で抱えている状態であることを理解してあげてください。
 

ちょっとした対応で、生活への負担を変えることがことができます。

認知症では、単に認知機能が低下するだけではなく、生活に様々な障害を起こします。
「生活にどのような影響があるか」、
「ご本人がそのように行動する理由は何か」、
「どのように対応すればよいか」を知っておくことで、病気が悪化していくのを防ぐことができます。

case1 ご飯を食べてないと言いはる。

原因

 認知症の初期ではついさっきの出来ごとすべてを忘れてしまうようになるため、「何を食べたか?」ではなく、食べたことそのものを忘れてしまっています。

対応方法

◇「おいしかった」、「たのしかった」という感情は残りやすいため、できるだけ、一緒に楽しく食事をしてはいかがでしょうか。
◇「そうでしたね」と受け入れて、簡単なおやつをあげてはどうでしょうか。

case2 何度も同じ質問を繰り返す。

原因

この背景には、自分が忘れやすくなっているというご本人の強い不安があります。言い換えれば、ご本人が忘れたくない、注意しておきたいと思っていることを繰り返し確認している可能性があります。

対応方法

◇「さっきも聞いたよ!」などの指摘はせず、可能ならば根気よく、やさしく答えてください。
◇その質問の背景に、ご本人がどんなことを心配しているのかを理解することも重要です。

リビングに大きなカレンダーを貼り、そこに予定を一緒に書き込むことで、曜日の感覚や行事を印象づけることもできるかもしれません。

case3 物がなくなった、盗られたと言い出す。

原因

これは認知症で多い「物盗られ妄想」という症状です。
このような妄想は、認知症になる前に、仕事熱心で責任感が強い人に多いと言われています。
自分で自立して生きてきた方には、「自分が忘れる」ということを受け入れられないため、「盗られた」と解釈することで自分を納得させているのです。

対応方法

◇物盗られ妄想は、否定するとますますこだわりが強くなります。「一緒に探しましょうね」と受け入れて対応することも必要です。
◇ご本人が寂しさや不安を抱えていることをくみ取り、「もし、探して出てこなくても、私が貸しますから大丈夫ですよ」と安心させることで、気持ちが柔らぐかもしれません。

case4 毎日の料理がいままでのようにできない。

原因

認知症により判断力が低下するため、同じ献立が続いたり、スーパーに行っても何を買っていいか分からなくなります。
また、調味料をどのくらい入れればよいか判断できず、味付けが今までと変わってくることもあります。

対応方法

◇買い物のときは必要なものをメモ書きにしてみてはどうでしょうか。
◇台所で道具を見て使い方など迷っていても、「わたしがやりますよ」と代わってしまうのでなく、ゆっくりと時間をかけて一つ一つの動作をアドバイスしてみましょう。

ご本人の「料理をつくりたい」という気持ちを大切にして、ゆっくりと進めてもらいましょう。
できることも取り上げてしまうと、徐々に自分で何かをしようという気持ちそのものもなくなってしまう可能性があります。

case5 季節や場所に合わない服装をする。

原因

季節感が徐々に薄くなり、判断力が低下していくため、今どんな服装を選べばよいかが分からなくなることがあります。
また、「きれいに装いたい」などの意欲も低下して、「何でもいい」という考えになってしまいがちです。

対応方法

◇「この青いセーター、似合いますね」と、季節に合った服を、ご本人に薦めるのはいかがでしょうか。
「似合っている」、何気ない言葉ですが、褒められることは、ご本人には大きな安心と喜びになるかもしれません。

 

case6 外出しようとする。

原因

漠然とした不安感、落ち着かない気分があり、これによって当てもなく歩き回ったりすることもあります。
また、自分の居場所を何となく求めて外へ無断で外出することも少なからずあります。

対応方法

◇外出を止めるのではなく、「お出かけは、後で一緒に行きましょうね」と、こちらから外出するタイミングを提案することも大切です。
 

放っておくと・・・

認知症は進行していく病気のため、生活に様々な障害があらわれるようになります。
認知機能は放っておくとどんどん低下していきます。おくすりによる治療で認知機能の低下を防ぐことは、認知症を悪化させないために重要です。