インフルエンザ
引用
- 武田薬品工業株式会社
- グラクソ・スミスクライン株式会社
インフルエンザ
インフルエンザは、インフルエンザにかかった人のくしゃみや、つばなどと一緒に放出されたウィルスを、鼻腔や気管等に吸入することで感染します。
日本では例年11月から4月に流行し、いったん流行が始まると短期間で乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込みます。特に高齢者や呼吸器等に慢性の病気をもつ方は重症化しやすく、生命の危険も伴うため、注意が必要です。
また、子どもがインフルエンザにかかると、まれに急性脳症を起こして死に至ることもあります。
現在、インフルエンザはAソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)、B型の3種類が同時に、あるいは混在して、それぞれが毎年少しずつ変異しながら流行を続けています。
症状
普通の風邪と異なり、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛といった全身の症状が強く、あわせて普通の風邪と同様の、のどの痛み、鼻汁などの呼吸器症状も見られます。さらに、気管支炎や肺炎、子どもの場合は中耳炎や熱性けいれん、急性脳症等を併発して重症化することがあるのも特徴です。
ワクチンの接種効果
インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を最小限にとどめることができます。ワクチンの効果は、年齢や本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の合致状況によって変わります。
ワクチンの接種を受けないでインフルエンザにかかった65歳以上の健康な高齢者について、もし接種していたら、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡率を阻止する効果があったと報告されています。特に65歳以上の方や、基礎疾患のある方、乳幼児(1歳以上6歳未満)は、インフルエンザが重症化しやすいため、かかりつけ医とよく相談のうえ、接種を受けることをおすすめします。
ワクチン接種の対象となる方
定期接種
65歳以上の高齢者および60~65歳未満で基礎疾患(気管支ぜんそく等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全など)がある方に接種できます。
任意接種
インフルエンザの発症と重症化を防ぎたい方すべてが任意接種の対象です。
ワクチンの接種間隔
- 13歳以上の方は、1回の接種で効果があるといわれています
- 13歳未満の子どもは2回の接種が必要であるといわれています。その場合、原則的に接種感覚は1~4週間ですが、より免疫効果を高めるためには、1回目の接種から4週間後に2回目を接種するのが最適です。
ワクチンはいつごろ接種するのが効果的?
インフルエンザウィルスは毎年のように変異しながら流行を繰り返しています。これに対応するために、原則的に予防接種は毎年必要です。流行期である初冬から春先に備えて遅くとも12月中旬までにワクチンの接種を済ませておくとよいでしょう。また、ワクチンの予防効果は接種後2週間からはじまり、5カ月間は持続するといわれています。
ワクチンに使われる株はどうやって決められる?
WHOの専門会議で次シーズンに向けたインフルエンザワクチンに用いる候補株が選定されます。WHO推奨株を参考にして、あわせて日本の流行状況等から予測を行い、またワクチンの製造に適した株を選択し、毎年5~6月頃に次のシーズンのワクチン株が決定されます。
予防接種を受ける前の注意点
- 予防接種を受ける前日は、なるべく入浴やシャワーをすませ、体を清潔にしましょう。
- 接種当日の朝は、出かける前に体温を測って記録しておきましょう。
接種会場、接種医でも体温の測定をします。 - 接種する方がお子様の場合は、接種当日に体調が普段と変わらないか確認しましょう。
- 接種する方がお子様の場合は、母子健康手帳を持参しましょう。
- 予防接種を受けることが適当でない方や注意が必要な方もいます。何か気になることやわからないことがあれば、接種前に医師にご相談ください。
予防接種を受けた後の注意点
- 接種後30分以内に、まれに急な副反応が起こる場合がありますので、異常があった場合は医師にすぐ連絡してください。
※お子様の場合は様子をよく観察してください。従って30分ぐらいは医療機関のすぐ近くにいるようにしましょう。 - 接種後は普段通りの生活でよいのですが、激しい運動は避けてください。
- 接種を受けた後、注射したところが赤く腫れたり、痛んだりすることもありますが、一時的なもので、通常2~3日で治ります。また、発熱、頭痛、寒気、だるさ等がおこることがあります。まれに湿疹、じんましん、かゆみ等が数日みられることもあります。
- 万一、接種後に高熱、けいれん、ぐったりした状態等の異常がでた場合は、速やかに医師の診察を受けてください。
※他の予防接種を受けるときは6日以上あけてください。
インフルエンザの予防法
予防の基本は流行前にワクチン接種をすることですが、あらかじめ予防するには日常生活においても注意が必要です。
特に、空気が乾燥するとかかりやすくなるので、高齢者や慢性疾患をもっている方、疲労気味や睡眠不足の方は、以下のような点に注意してください。
- 人混みや繁華街への外出を極力控える
- 外出時はマスクを利用する
- 室内では加湿器を使って適度な湿度を保つ
- 体を休め、免疫力を高める
- バランスよく栄養をとる
- 帰宅時はうがい・手洗いを習慣にする
もし、インフルエンザにかかったら
- 単なる風邪と軽く考えず、早めに医療機関で治療を受ける
- 安静にして休息をとる
- 水分をたっぷり補給する
※いわゆる風邪薬はインフルエンザウィルスに直接効くものではありません
学校や会社への復帰の目安
インフルエンザは症状が出てから3~7日間は他人にうつす可能性が高いので、人の多く集まるところへの外出は避けましょう。学校保健安全法では、「発症後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼稚園児については3日)が経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。ただし、病状によって伝染の恐れがないと認められたときはこの限りではありません。いずれの場合も、ムリをせず、十分に体力が回復してから復帰しましょう。
インフルエンザの出席停止期間の見直し
昨今、抗インフルエンザ薬が投与され、感染力が消失していない段階でも解熱する状況が生じ、解熱のみを基準にした出席停止期間では、感染症のまん延予防という目的が達成できないおそれがある
「発症後五日を経過するとウィルスがほとんど検出されなくなる」という研究報告を踏まえ、「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで」と出席停止期間を改める |
低年齢者ほどウィルス排泄が長期に及ぶという医学的知見を踏まえ、「保育所における感染症対策ガイドライン」(平成21年8月厚生労働省)にならい、幼児は「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後三日を経過するまで」 |
インフルエンザの出席停止期間 |
抗インフルエンザ薬投与後の発熱と インフルエンザウイルス量 |
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患者さんを見守るポイント
インフルエンザの治療を受けた後でも、次のような症状を認める場合は、
すぐに医療機関を受診しましょう。
また、下記以外でもいつもと様子が違って心配な場合は、医療機関に相談してください。
小児の場合
- 手足を突っ張る、がくがくする、眼が上を向くなど、けいれんの症状がある。
- ぼんやりしていて視線が合わない、呼びかけに答えない、眠ってばかりいるなど、意識障害の症状がある
- 意味不明なことをいう、走り回るなど、いつもと違う異常な言動がある。
- 顔色が悪い(土気色、青白い)。唇が紫色をしている(チアノーゼ)。
- 呼吸が速く(1分間に40回以上)、息苦しそうにしている。
- ゼーゼーする、肩で呼吸をする、全身を使って呼吸をするといった症状がある。
- 「呼吸が苦しい」、「胸が痛い」と訴える。
- 水分が摂れず、半日以上おしっこが出ていない。
- 嘔吐や下痢が頻回にみられる。
- 元気がなく、ぐったりしている。
成人の場合
- 呼吸困難または息切れがある。
- 胸の痛みが続いている。
- 3日以上熱が続いている。
- 脱水の可能性がある(嘔吐や下痢で水分が摂れないなど)。